人工湿地とは
人工湿地は、主に排水の水質浄化を目的として人工的に造られた湿地のことです。人工湿地内は植物を植えるなど、生態系の環境も整えます。
主にヨーロッパを中心に人工湿地は用いられてきましたが、近年日本でも利用されるようになり、畜産業が盛んな北海道を中心に、毎日発生する数トンもの畜産排水の処理に人工湿地が導入され始めています。
ろ過による物理的な処理と、自然の生態系の力を利用する生態工学的な処理により、低コスト省エネルギーかつ持続的に排水を無害化できる汚水処理法として注目されています。
人工湿地のメリット
①維持費が安い
浄化処理に必要なエネルギーはポンプを動かすわずかな電気のみで、運転費用が低コストです。
②維持の労力がほとんどかからない
微生物が汚泥を分解してくれるので、手入れなどがほとんど必要ありません。
③長持ち
自然の作用は持続的であり、人工の生態系が維持されている限り活用できるため設備としての耐用期間が長いことも魅力です。
④省エネ
自然の力を利用した手法であることから、電気的なエネルギーをほとんど必要としません。
⑤企業のイメージアップ
人工湿地のメリットはSDGsの概念に当てはまるので、導入自体が企業のイメージアップにつながります。
ろ床の構造(伏流式鉛直流の場合)
ろ床は、排水を流出入する配管(分配パイプ)と、水底に根を張るヨシやガマなどの抽水植物、砂利やレキなどのろ過層で構成されます。ろ床表面にはスーパーソルを敷設することも目詰まり対策としてオススメです。間欠的に流入する排水はろ過層に浸透し、ろ過層内の微生物などにより時間をかけて分解されます。
浄化の大まかな流れ
おすすめは「ハイブリッド伏流式人工湿地」
人工湿地を利用した排水の浄化方法には表面流式、伏流式の2種類があります。
「ハイブリッド伏流式人工湿地」とは、伏流式で排水のろ過方法に「鉛直流」と「水平流」の2つを組み合わせたものをいいます。
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鉛直流 重力の方向にろ過 好気的 |
水平流 水平方向にろ過 嫌気的 |
特徴
- 浄化能力が高い
- 表面流式に比べ冬季も浄化機能が持続する
- 排水の濃度や量の変化にも対応できる
- 冠水しにくい